スマートフォンと連携したナースコールシステムのメリットとは
スマートフォンと連携するナースコールシステム
ナースコールシステムは、病院における入院患者と看護師を結ぶ命の絆ともいえる大切なアイテムです。
病室に常駐することができない看護師に点滴が終了したことを知らせたり、急変を伝えたりするために使用されているシステムが一般的に普及したのは、1980年代のことです。
それ以前のナースコールは、病室単位で設置された子機とナースステーションに設置された親機を繋いだもので、患者が手元のボタンを押した後に、天井のマイクに向かって大声で話さなければならず、排せつ処理などのプライバシーに配慮されたものではありませんでした。
1980年代になると患者一人一人の枕元に子機が置かれるようになり、通常の会話と同じボリュームの声で、他の患者の前では話しにくいことも伝えられるようになりました。
ベッド単位で意思疎通が可能となったことで、ナースステーションに待機している看護師も、病室ではなく個人単位で急変に気づくことができるようになったのです。
その後、指に不自由がある患者でも握りやすい形状の呼び出しボタンや身体を動かすことができない患者がセンサーに息を吹きかけて看護師を呼ぶことができるタイプのものなど、改善が加えられました。
しかし、子機の形状や機能が進化しても、患者との連絡は、ナースステーションに固定設置された親機でしか取ることができず、看護師はどんなに多忙であってもナースコール待機担当者を配置する必要がありました。
この問題を解決するために、携帯型のナースコールシステムが登場し、院内ポケットベルや、通話が可能なハンディータイプのものが次々に登場しました。
当初PHSで利用されていたシステムは、現在ではスマートフォンと連携することで、さらに利便性が高いものとなっています。
PHSからスマートフォンに進化したナースコールシステム
携帯電話が普及してから院内で医師や看護師を呼び出すための通信端末として広く活用されるようになったのがPHSです。
携帯電話は、ペースメーカーなどの医療機器への悪影響が懸念されていたため、ほとんどの病院で院内での使用が禁止されており、医療用の通信端末としてはPHSを使用するのが一般的でした。
最近では、電磁波などの影響がそれほど大きくないと考えられた結果、機内モードで航空機での使用も許可される状況にあり、院内専用で使用できるものも登場しています。
看護師にPHS端末が配布されると、移動中であっても患者のナースコールを受けて対応することができ、緊急対応でナースステーションが空の状態になってもナースコールを見逃すこともなくなりました。
しかし、従来のPHSは、呼び出しをした患者の病室を確認することしかできません。
結局、ナースステーションで病室を確認してから患者さんのもとへ駆けつけて状況を確認し、必要な準備や対応を開始しなければならないという時間的なロスの解消にはなりませんでした。
また、患者個人と連絡ができるようになっても、一度に意思疎通ができるのは一人であり、同時多発的にナースコールがなった際の対応も難しかったのです。
ナースコールシステムがさらに進化すると、呼び出しとともに患者個人の名前や所在、呼び出し理由や状況などを病院内の情報システムとも連携して適切に対応ができるスマートフォンが登場しました。
スマートフォンには、GPS機能が備わっており、位置情報を把握することもできます。
看護師の現在位置や業務内容が把握しやすくなり、病院内の動線の改善につなげることも可能となりました。
また、同時に15台以上のスマートフォンに呼び出すことができるため、担当看護師が手が離せない際のフォローもしやすくなります。
スマートフォンとの連携によるナースコールシステムのメリット
スマートフォンと連携したナースコールシステムを導入すると、患者が呼び出しボタンを押すだけで院内用スマートフォンの呼び出し音がなり、患者の氏名、部屋番号などが表示されます。
同時に複数の端末を呼び出すことができるため、担当看護師が応答できない場合は、他の看護師にコールが転送されます。
また、伝達する情報量が豊富であるため、現在、病院で多く導入されている電子カルテシステムと連携して、患者の年齢や性別、病状などの基本的なデータを確認することもできます。
システムは、ナースステーションに設置されるターミナル端末で管理して、電話回線などを使わないITネットワーク上でやり取りができます。
そのため、病院内のナースステーションなどを繋ぐ固定電話を削減することもできます。
薬局や外来、他の科などへ内線連絡で使っていた電話を必要とせず、手持ちのスマートフォンで連絡できるのも業務の効率化という点で大きなメリットです。
カメラ機能と連動すれば、病室内に設置したカメラの映像を手元で確認することもできるため、遠隔監視システムとしても活用できます。
TO DOリストのように処理しなければならない業務内容を表示したり、チャットのように文字で会話したりすることができ、スタッフ同士のコミュニケーションがスムーズに行えることもメリットとなります。
内容や緊急度がわからないため、常に即対応しなければならなかった内線電話や病室からのナースコールが、現在では、優先順位を考えながら、個人ではなくチームで対応することができるようになります。
警告ブザーのような呼び出し音に患者も看護師も大きなストレスを感じていたナースコールは、近い将来には、ナースコールという言葉自体もなくなり、常時ケアが基本となる新しいシステムに進化するかもしれません。